農業経営コラム
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【トウモロコシ生産が農業政策を変える日


『農業経営者』編集長 農業技術通信社 代表取締役社長 昆吉則 

3月15日付の新聞、TVはこぞって政府が食糧自給率向上の目標値を民主党政権時代に定めた50%から45%に引き下げることを報道している。新たな食料自給率の目標を盛り込んだ、「食料・農業・農村基本計画」は、来月上旬にも閣議決定される予定だそうだ。

本誌はかねてカロリーベースの食糧自給率向上を叫ぶ政策が、農業予算獲得の理屈付けに過ぎないことを批判してきたが、農業団体の意向を受けたその農業政策の荒唐無稽さは、新たな基本計画も変わらない。そして、民主党政権時代の自給率向上目標50%はもとより、今回の自給率向上目標においても、過大な財政負担を伴う飼料米の増産以外何も具体的な自給率向上の手段も根拠も示されてはいない。今回の変更は、主食用米の減産と自給率向上という建前で要求しようとした交付金の増額を財務省からダメだしされた結果の数字合わせなのではないのではないだろうか。
 我々の水田転作で取り組む子実トウモロコシ生産は、自給率問題にとどまらぬ日本農業のイノベーションを実現する現場からの提案である。それは政策提案と言うより、続けられるはずもない法外な交付金を前提とした飼料米政策に惑わされず、農業経営者の自己防衛策として取り組むべき経営戦略である。水田での畑作作業機の利用という水田作業のイノベーションとともに。
 政策の変化で農業が変わるのではない。現実の生産者と需要者の取り組みに政策が追従してくるのだ。
 今月号の「シリーズ・水田農業イノベーション」として掲載した叶義和氏の「食料自給率とトウモロコシ国産化の寄与度」の報告(26頁)を是非読んで頂きたい。
 叶氏は、本誌読者のこれまでの取り組みとトウモロコシ輸入や農業農村の環境変化に関する本誌の主張を下敷きにして、食糧自給率向上に費やされる財政負担を飼料米とトウモロコシとの場合で試算した。
同氏によれば、飼料用米で食料自給率を1%向上させるのに要する財政需要は、標準単収で4210億円、多収性品種で4920億円もかかるという。仮に、飼料用米で総合食料自給率を40%から45%へ、5%引き上げようとする場合、年間2兆〜2兆5千億円の財政需要が発生するが、そんなお金を使うことを国民は認めるだろうか。ところが、トウモロコシなら転作助成は1%向上で1030億円。5%でも約5千億だ。標準単収飼料用米の4分の1、多収性品種飼料用米の5分の1で済む。
 北海道長沼町や岩見沢市でのトウモロコシ生産は、当初の兵庫県の養鶏家((株)オクノ)に加えて大手商社やホクレン、食品メーカーなどによる需要が大幅に増え、供給不足が心配されるほど。花巻市内でも盛川氏等と養豚家(高源精麦(株))とが耕畜連携。さらに宮崎県川南町でエコフィードと輸入Non-GMOトウモロコシで豚用の飼料を生産している(株)宮崎サンエフ(遠藤威宜社長)が年間で7千トン以上の国産Non-GMOトウモロコシを求めている。トウモロコシ生産はまだ始まったばかりだが、国産汎用コンバインのトウモロコシ対応も目処が立ってきた。規模拡大を進めるためには乾燥貯蔵施設が必要となるなど様々な問題も残されてはいるが、始まって4年、着実に発展してきた。耕種農家と畜産農家との直接の耕畜連携、さらに飼料仕向けだけでなく、食品やコーンスターチなどへの展開も始まる。この取り組みに政府、農水省が政策的に追従してくることを期待したい。
 
 
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